教育、法曹、医療…様々な知見を結集し、いじめのない社会を作る。

大津市中2いじめ自殺事件をきっかけに、2013年に『いじめ防止対策推進法』が成立・施行されました。それから10年が経ち、「いじめはダメである」という認識が広まったにもかかわらず、いじめ認知件数、およびいじめに起因した自殺(未遂含む)・不登校などの重大事態件数は減っていません。

いじめは成人期のメンタルヘルスや引きこもりなど、卒業後の人生に長く甚大な影響を及ぼす可能性があります。しかもその影響がいじめの被害者・加害者・傍観者いずれにも及ぶことは、すでに世界中の研究から明らかです。

いじめを防止するため、教育現場、行政、法曹、医療など、それぞれの分野から対策が打ち出されてきました。しかし増加に歯止めがかからない以上、新しいアプローチで取り組む必要があります。そこで私たちは、2023年4月に「子どもいじめ防止学会」(以下、本学会)を立ち上げました。

本学会が考える「新しいアプローチ」とは、まず、分散していた幅広い分野の知見を結集すること。そして科学的知見を加え、いじめ対策の質を上げることです。全国の学校で頑張っている先生、行政、法曹、医療、研究者など、いじめの予防・防止や、被害に遭った子どもの支援・指導に取り組んでいる方々はたくさんいます。皆さんがお互いにコミュニケーションをとりながら議論を深め、対策を打ち出す。実施後に必ず振り返り、対策の質を上げ続ける。このような新しいアプローチで取り組むには、勉強会やグループではなく「学会であるべき」と判断しました。

本学会では4つの軸で活動を行う予定です。

  1. 1.啓発事業

    いじめについて、研究でわかっていること、日本の現状、いじめ対応の方法などについて、一般の方々、教育関係者、保護者の皆様にあてて、HPやSNSを通して積極的な情報発信、セミナー・講座の開催を行う。

  2. 2.交流事業

    様々な分野の専門家、立場の方々が集まり、いじめの防止等に関する意見交換・研究を行う場として、学術集会や研修会、交流会等を開催する。

  3. 3.研究事業

    いじめに関する情報を収集し、様々な分野、立場の方々が協力していじめ防止等に関わる研究を進められるよう働きかけ、実際に研究活動を進める。特に子どものいじめの予防や対応に関して、実際に現場で活用できる方法の開発、プログラム化、その効果の測定について進める。

  4. 4.その他

    学会間の連携、国際的ないじめ予防に関する事業や研究への参画、行政等への意見表明等を行う。

理事の紹介

  • 【代表理事】野村 武司 | 東京経済大学現代法学部教授

    野村 武司

    “ほんのささいなことでも、自殺をするほど深く傷つく子どもがいる” “いけないことだとわかっているのに、起こってしまう”――こうしたいじめの特徴を踏まえ、これまで何が十分でなく、これから何が必要かを明らかにしなければなりません。いじめは何が原因で起こり、どのような影響があるのか。深く傷ついた子どもの回復、いじめの加害者になった子どもへの対応、学校等の組織やいじめ重大事態の第三者調査のあり方――これらの問題には様々な職種・立場の人が関わっているので、多様な知見を生かす素地はあります。その素地に科学的知見を加えたプラットフォームを作り、いじめに苦しむ子どものない社会を作りたい。そんな思いから「子どもいじめ防止学会」が生まれようとしています。

  • 【理事】桝屋 二郎 | 東京医科大学病院こどものこころ診療部門 准教授

    桝屋 二郎

    いじめの問題はとても複雑です。ある調査では、いじめられる経験が全くなかった子どもも、いじめる経験が全くなかった子どもも、共に1割程度しかいないことが分かっています。つまり、いじめの被害と加害は移行を繰り返すのです。子ども達のパワーバランスは複雑で、繊細で、大人には見えにくいものです。そして、いじめは被害を受ける側にも、加害をする側にも心に大きな傷を残し、その子の生涯に渡って悪影響をもたらすのです。子ども達が漏れ落ちることのないセーフティネットを作るには、子ども達の複雑で繊細な状況を、大人や社会が正しく理解し、解明する必要があります。多領域の支援者や研究者が、多様な角度から議論し知恵を結集できる場(=学会)が必要と我々は信じています。

  • 【理事】和久田 学 | 公益社団法人 子どもの発達科学研究所 所長・主席研究員

    和久田 学

    いじめがダメであることは、学校、保護者、子ども達、誰もが知っています。しかしいじめは減るどころか増え続けているのが現状です。今こそ、この国のいじめ対策やいじめ防止の方法を明確にする必要があります。「教育に科学を使う」という発想に、抵抗感を覚える教育現場は少なくありません。そのため、教育現場と研究機関の間には時として隔たりが生まれることがあります。一方、研究者同士でもいじめについて議論する場が多いとは言えない状況です。いじめをなくしたい、子ども達を救いたい。そんな思いを同じくする人々が、協力関係を築けないのはあまりに悲しいことです。教育・医療・司法などの立場を超えて議論し、協力関係を築く環境を整えるために、ぜひ皆さんのご協力をお願いいたします。

  • 【理事】奥山 清 | 公益社団法人 子どもの発達科学研究所 副所長・社会実装局 局長

    奥山 清

    いじめ防止のための学会の設立は、これまでに何度も立ち上げようとしては頓挫したと聞いています。今回はきちんと学会を立ち上げ、 日本の大きな社会問題である、いじめ防止を推進する団体へと育てていければと考えております。是非とも学会の立ち上げと運営のために、皆様のご協力を願っております。

設立メッセージ

ご賛同いただいている方々の紹介

教育評論家の尾木 直樹氏、心理学者の仲 真紀子氏をはじめ、教育・医療・法曹など様々な分野における専門家・子どもの支援者の方々が、本学会の活動にご賛同いただいています。

ただし本学会は、専門家や支援者のためだけのものではありません。研究や支援に直接携わっていなくても、一般の方々保護者など、「いじめをなくすために協力したい」と考えるすべての方々に広く意見を求め、その力を結集することを目指していきます。

尾木 直樹 氏/教育評論家 法政大学 名誉教授

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<今こそ英知を集めて>
いじめは国際的にも深刻な社会問題となっている。フランスでは2022年にいじめの被害者が自殺もしくは自殺未遂をした場合、加害者に最大禁固10年、罰金2000万円が課せられる新法が施行。韓国では2026年度からいじめの加害記録を大学入試の結果に反映させることが義務化されるという。
日本では2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立したにも関わらず、2021年度のいじめ認知件数は615,351件にも上り、過去最多を記録。命にかかわる「重大事態」も後を絶たない。 一体どうなっているのか、どうすればいいのか――。「こども基本法」が施行された今、子ども新時代の構築に向け、英知を集めて総力を発揮すべき時ではないだろうか。本学会が科学的根拠と多職種の実践に根差し、いじめ防止に向けて包括的かつ学際的な議論と研究の場になることを期待してやまない。

喜多 明人 氏/早稲田大学 名誉教授

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子どもいじめ防止学会の設立を歓迎します。ぼくは、60年以上前、小学生だったころ、いじめを受けた経験がある。理由は、転校生。2度目の転校で小6の時に、4,5人のワルに体育館の裏に連れていかれて暴力を受けた。ところが、その時に、「もうやめろよ」と割り込んできた子がいた。当時流行っていた「月光仮面」ではなく、学級委員だった。戦前のいじめの止め役はガキ大将だったが、戦後は学級委員や児童会などの自治組織。しかし、1980年代に入り、子どもの自治は形骸化し止め役はいなくなった。いじめはエスカレートして自死に追い込まれる事件があとを絶たない。現代において、いじめの止め役は誰なのか。学会で大いに議論してほしい。

仲 真紀子 氏/北海道大学 名誉教授

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子どもいじめ防止学会による分野横断研究と、成果にもとづく実践を応援いたします!研究分野のひとつは、面接の方法です。いじめが疑われるとき、私たちは「いつ」「どこで」「誰が」「ここもやられたの?」と根堀葉掘り何度も聞いてしまいがち。しかし、それでは記憶は汚染され、心理的な負担も増してしまいます。「何がありましたか?」「そして?」「それから」「そのことをもっと話して」というオープンな質問で、被害を受けたとされる人、加害したとされる人、目撃したとされる人から独立に、「何があったか」を本人の言葉で語ってもらい、それを正確に記録しておくことが重要です。

藤川 大祐 氏/千葉大学 教育学部長 教授

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いじめ防止対策推進法が成立して10年。私はこれまで学校や教育委員会でのいじめ防止対策や重大事態調査に関わってきました。また、中学校長として、いじめに対応できる学校づくりに教職員とともに取り組んできました。しかし、今でも学校や教育委員会の対応に問題があり、いじめ被害で苦しんでいる方が多くおられます。このような状況を変えていくためには、いじめ問題に関心を持つ多様な専門家が知見を出し合い、研究を深めることが重要です。子どもいじめ防止学会の設立に賛同します。そして、私自身も学会の活動に貢献できたらと考えています。

  • 青山 郁子 氏都留文科大学 教授
  • 安達 和志 氏神奈川大学 名誉教授
  • 足立 匡基 氏明治学院大学 心理学部 准教授
  • 安保 千秋 氏都大路法律事務所 弁護士
  • 荒牧 重人 氏子どもの権利条約総合研究所 代表
  • 石川 悦子 氏こども教育宝仙大学 教授
  • 市川 須美子 氏獨協大学 名誉教授/元教育法学会 会長
  • 市川 宏伸 氏児童青年精神科医/(一社)日本発達障害ネット 理事長/(一社)日本自閉症協会 会長/(一社)強度行動障害医療学会 代表/(社福)正夢の会 理事長
  • 井上 猛 氏東京医科大学 精神医学分野 主任教授
  • 井上 幸紀 氏大阪公立大学大学院医学研究科 神経精神医学 教授
  • 岩佐 嘉彦 氏弁護士 大阪
  • 宇佐美 政英 氏国立国際医療研究センター国府台病院 子どものこころ総合診療センター長/児童精神科診療科長
  • 内山 登紀夫 氏福島学院大学 副学長/よこはま発達クリニック 院長
  • 鬼澤 秀昌 氏おにざわ法律事務所 弁護士
  • 片山 泰一 氏大阪大学 教授/公益社団法人子どもの発達科学研究所 代表理事
  • 木村 匡宏 氏スポーツトレーナー
  • 小平 雅基 氏総合母子保健センター愛育クリニック 小児精神保健科部長
  • 齊藤 万比古 氏恩賜財団母子愛育会愛育研究所 部長
  • 杉本 希映 氏目白大学 教授
  • 杉山 登志郎 氏福井大学子どものこころの発達研究センター 客員教授
  • 住友 剛 氏京都精華大学 国際文化学部 教授
  • 辻井 農亜 氏富山大学附属病院 こどものこころと発達診療学講座 客員教授
  • 遠山 正彌 氏大阪府立病院機構 理事長/大阪大学 名誉教授
  • 野澤 和弘 氏植草学園大学 教授/毎日新聞 客員編集委員
  • 野邑 健二 氏名古屋大学 心の発達支援研究実践センター 特任教授
  • 畠中 直美 氏一般社団法人チャレンジドLIFE 代表
  • 平尾 潔 氏くれたけ法律事務所(第二東京弁護士会所属)
  • 服巻 智子氏一般社団法人 誠智愛の会 代表理事
  • 藤山 直樹 氏精神分析家/上智大学名誉教授
  • 堀江 まゆみ 氏白梅学園大学 教授
  • 堀越 隆伸 氏群馬大学 小児科 助教
  • 松永 寿人 氏兵庫医科大学 医学部精神科神経科学講座 主任教授
  • 宮本信也 氏筑波大学 名誉教授
  • 村中 直人 氏一般社団法人 子ども・青少年育成支援協会 代表理事
  • 村山 裕 氏弁護士(東京弁護士会所属)/日弁連子どもの権利委員会 幹事
  • 八木 淳子 氏岩手医科大学 教授
  • 山中 岳 氏東京医科大学 小児科思春期科学分野 主任教授

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クラウドファンディングの応援、ありがとうございました

本学会では現在、クラウドファンディングサイト『READYFOR』にて活動資金を募集しています。

本学会の設立に至った詳しい経緯、理念、活動予定、発起人メンバーの経歴などについては、そちらをご参照ください。また、ご支援に対するリターンについても詳しく紹介しています。ぜひ本学会の活動にご理解をいただき、ご支援をご検討くださいますようお願いいたします。

2023年5月1日より2か月にわたって実施したクラウドファンディングプロジェクト「いじめをなくす!子どもいじめ防止学会の活動費を募集します」は、2023年6月29日23時をもちまして、終了いたしました。
皆様の温かい応援のおかげで、支援総額は当初の目標金額3,000,000円を大きく上回る5,414,000円、233名のご支援をいただくことができました。 沢山の応援、誠にありがとうございました。

活動に協力してくださった皆様(活動協力者ページ)

READYFOR(クラファン)サムネイル画像

子どもいじめ防止学会の運営は、公益社団法人 子どもの発達科学研究所が行います。
公益社団法人 子どもの発達科学研究所は、子育て、発達障害、いじめ予防、就労支援等に関し、
科学的根拠に基づくプログラムの研究開発と提供を行う日本では数少ない社会実装団体です。

運営事務局 子どもの発達科学研究所